特許評価の大まかな動向

特許権者は「自分の特許にはどのくらいの価値があるのだろうか?」と疑問に思うことがよくあります。

残念ながら、この質問に対する明確な答えはありません。さまざまな要因が特許の価値に影響を与える可能性があるからです。このブログ連載では、特許の価値に影響を与える要因を探っていきます。この最初のブログでは、あらゆる特許の価値に影響を与える大まかな動向を見ていきます。これには、マクロ経済、ビジネスや技術、法規制、個々の国や地域の動向などが含まれます。今後のブログでは、個々の特許や特許ポートフォリオの価値を決定する具体的な要因について掘り下げていきます。

マクロ経済

マクロ経済は特許の価値に影響を与えます。2008年のリーマンショックの後、多くの企業は債務超過や倒産に直面し、資金を節約する必要がありました。そして、特許の購入などは後回しになりました。その結果、特許の購入需要は激減し、特許の価値は低下しました。ところが、その後の数年間で特許市場は回復しました。特許侵害のリスクを軽減し、競合他社に対して優位性を獲得し、ライセンス収入を得るために、企業は再び特許を積極的に購入するようになりました。現在は金利上昇期にあるので、多くの企業が経営難に直面するでしょう。これにより、特許の需要と価格が再び低下する可能性があります。

過去50年間の経済のグローバル化により、企業はますますグローバルに事業を展開し、競争が行われるようになっています。自国での特許保護だけでなく、事業を展開している海外の国々でも保護が必要です。これにより特許の価値が高まっています。

近年では、保護主義の台頭と安全保障への懸念により、海外拠点をより信頼のおける同盟国に移す国も出てきています。これが競争やイノベーションの低下を招き、特許価値の低下につながる可能性もあります。

ビジネスや技術の動向

スマートフォンを始めとするモバイル端末でのインターネットサービスが普及したことは、過去15年間最大の世界的なビジネストレンドの1つとなっています。この分野で成功を収めているApple、Alphabet(Googleの親会社)、Meta(Facebookの親会社)、Samsung、Huaweiなどの企業は、大きな収益を上げています。その結果、この分野の特許の価値が高まってきています。

製品のライフサイクル(導入期、成長期、成熟期、衰退期)、関連特許の価値に影響を与えます。特許の需要が高くなるのは、関連製品の市場がすでに大きく成長しており、さらに成長し続けている時です。売上の伸びが鈍化すると、競合他社の市場シェアはより安定します。企業がもはや市場シェアを争う必要がなくなったことで特許を購入する必要性も少なくなるので、特許の価値が低下します。そして、製品カテゴリーの売上が減少し始めると、その関連特許を売却することはほぼ不可能になります。

法規制の動向

特許をめぐる法的環境は絶えず変化しています。

中国は、過去20年間にわたって世界トップクラスの特許制度を実施してきました。特許法を改正し、多くの特許審査官を雇用し、知的財産権訴訟を審理するための専門裁判所を設置しました。その結果、中国企業は現在、強固な特許ポートフォリオを持つことにさらに注力しています。これにより、中国での特許の価値が高まりました。中国経済は巨大であるため、これは特許価値に世界的に影響を与えています。

また、他の国々で重要な法改正が行われています。米国では、リーヒ・スミス米国発明法(Leahy–Smith America Invents Act、AIA)が当事者系レビュー(Inter Partes Review、IPR)を導入し、特許を無効にすることが容易になり、特許の価値が全般的に低下しました。欧州では、統一特許制度(Unitary Patent)と統一特許裁判所(Unified Patent Court)が最近導入されました。これにより、複数の国で特許保護を受ける際のコストと複雑さが軽減されるため、特許の価値が高まります。多くの画期的な特許訴訟では、特許の対象となる分野や特許を行使する能力や範囲を縮小する判決が下されました。

つまり、特許法は変化し続けており、それが特許の価値に影響を与えます。

まとめ

特許の価値は、絶えず変化する多くの要因に左右されます。このブログ記事では、マクロ経済、ビジネスや技術の動向、法改正など、特許の価値に影響を与えるマクロトレンドについて説明しました。今後のブログでは、特許ポートフォリオと個々の特許の価値に影響を与える要因を探っていきます。

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