組織や個人の方から、自社や自身の「特許を売却できますか?」というお問い合わせが多く寄せられます。可能な場合が多いのですが、特許によっては買い手がいないものもあります。特許の需要は次の要因に大きく左右されます。
以下にそれぞれの要因について説明します。
初めて申請する発明者の方は、どんな特許でもお金になると考えていることがよくあります。しかし、実際はそうではありません。価値のある特許は、商用製品を何らかの形で保護しています。特許請求の範囲に含まれる現行品や販売予定の商用製品が存在しなければ、その特許に価値はありません。
特許に売却またはライセンシングが可能な価値を持たせるためには、高い収益を上げている業界、さらに可能であれば、全世界の収益が10億ドル以上の業界を対象とすべきです。
半導体、電子機器、IT、通信などのハイテク産業では、製品は非常に複雑で、各製品には数千件から数十万件の特許が使われています。他社製品を侵害しない新製品を作ることは不可能です。そのため、企業は競合他社と特許のクロスライセンスを行う、あるいはクロスライセンス交渉の前に特許を購入するのが一般的です。クロスライセンスでは、特許の数(およびその質)が重要となります。1~2件のみの特許は有用性が低く、最低10~20件のパテントファミリーのポートフォリオが売却されるのが一般的です。
それとはまったく対照的に、製薬業界や化学品業界では、化学物質の特許1件のみで製品を保護することもあります。したがって、単一の特許またはパテントファミリーでも、容易に売却またはライセンスできます。
他の業界は、これら両極の間に位置しています。
特許の質は次の要因によって左右されます。
価値を高めるには、米国、中国、または欧州(ドイツまたは英国で登録)の少なくとも1つの地域で特許が付与されている必要があります。これらのいずれかの地域で特許が付与されていなければ、仮に出願中の特許出願があったとしても、その特許はおそらく売却の価値もライセンスの価値もないでしょう。
ハイテク産業では、上記の地域以外の国でもさらに特許を取得すると、多少付加価値を高めることができるかもしれません。これとは対照的に、製薬業界では潜在的な患者数が多いすべての国で特許を取得する必要があります。上記の国に加えて、他の主要な欧州諸国、ロシア、カナダ、メキシコ、日本、韓国、インド、インドネシア、オーストラリアでも特許を取得するのが一般的です。
他の業界は、ハイテク産業と製薬業界の両極の間に位置します。
特許に付与されるライセンスが増えるにつれ、その特許の売却価値、またはその後のライセンスの価値が低下します。かつて企業は、特許ポートフォリオ全体に非常に幅広い製品群の複数のライセンスを付与していたため、それが必要以上に価値を下げていました。最近では、通常ほとんどのライセンスは特定の種類の製品や特定の技術に対して付与されています。ところが、ライセンスの範囲の定義が不正確であると、特定の製品や技術がライセンスされているかどうかが不明確になり、特許の価値を低下させる可能性があります。したがって、企業が特許ライセンスの範囲を正確かつ可能な限り狭く定義することをお勧めします。定義があいまいなライセンスや必要以上に広く定義されたライセンスは、企業の特許ポートフォリオ全体の価値を低下させる可能性があります。
IT、電機、電気通信業界では、単一の特許ファミリーを売却またはライセンス供与することはほぼ不可能です。一方、製薬業界では、単一の特許ファミリーを売却またはライセンス供与することが可能です。その他の業界は、これら両極端の間に位置しています。
P.J. Parker では、アメリカ、ヨーロッパ、または中国で取得した特許がいくつか含まれている特許ポートフォリオに対してのみ、代行サービスを提供しています。これら3つの地域すべてで取得した特許が含まれていれば最適です。アメリカ、ヨーロッパ、または中国で取得した特許がない場合は、特許を取得した国の国内企業に売却できる可能性があります。その際は、国内の特許ブローカーに依頼することをお勧めします。
標準的な特許価値というものはありません。特許の価値は、特許の用途によって大きく左右されます。特許の用途には、競合他社を市場から排除する、ライセンス供与による収入を獲得する、競合他社とクロスライセンス契約の交渉をする、または競合他社への反訴を提起するなどがあります。これらの各用途によって特許の価値が異なります。特許を売却する場合、その特許の価値は、買い手が望む上限価格から特許の売却に伴う費用を差し引いたものとなります。特許をライセンス供与する場合も、特許権者とライセンシーとの交渉の結果、価値が決まります。
他社による商業利用がなければ、その特許にはおそらく売却価値もライセンス価値もないでしょう。
ポートフォリオに含まれる特許がすべて取得済みで、係属中の特許出願がない場合、ポートフォリオの価値を高めることは困難です。しかし、係属中の特許出願がある場合は、ポートフォリオに特許を追加することで、ポートフォリオの価値を高める方法があります。例えば、現在または将来の商品が侵害品となる可能性について巧みに記述した請求項を設けた継続出願を提出することができます。また、期限内に対応する外国特許出願を行うこともできます。