特許出願
中国、日本、韓国、台湾を含む北東アジアは、特許出願で世界最大のシェアを占める地域となっています。2019年には、中国、日本、韓国からの特許協力条約(PCT)による国際出願が、世界の49%を占め、北米とヨーロッパからの申請を上回りました。

この地域では、国内の特許出願も急増しています。2019年には、米国では62万件の実用新案の出願があった一方で、中国では140万件もの発明の特許出願がありました。 中国の人口規模と経済成長率、および日本、韓国、台湾の製造業を中心とする安定した経済を考慮すると、今後20年間で北東アジアが世界の特許出願をさらに支配することが予想されます。
日本と韓国の大企業は、長年にわたり世界最大規模の特許ポートフォリオを有しています。これらのポートフォリオには、中国の大手テクノロジー企業が徐々に追加されています。
特許訴訟
現在、中国は特許訴訟が最も多い国です。2019年には、第一審で審理された特許侵害訴訟の件数は22,000件となっています。一方で米国では、地方裁判所に提出された特許訴訟の件数はわずか3,347件のみでした。中国での特許侵害に対する損害賠償額は米国を大幅に下回りますが、近年、金額は着実に増加しています。 中国で提案されている法改正により、法定損害賠償と懲罰的損害賠償の両方の金額が増加することになります。
特許取引
米国は、その経済規模と多額の損害賠償請求が可能なことから、特許流通市場での取引(特許の売買、ライセンシング)の最大の市場であり続けています。しかし、現在、北東アジアでは特許流通市場での取引が増加しています。
この地域の大手で定評のあるテクノロジー企業は、特許の一部を売却する意思を示す傾向が強まっています
北東アジアで高成長を遂げているハイテク企業の多数が、特許の買い手になりつつあります。これらの企業の事業は、特許ポートフォリオよりも速く成長することが多いため、競合他社にライセンス料を請求されたり、訴訟を起こされたりするリスクにさらされています。特許を購入することが、この不均衡を是正する最も手っ取り早い方法です。これらの企業は、特許実施主体なので、現在の技術と将来の技術の両方を重視しています。これは、主に現在の侵害に基づく特許評価を行う特許不実施主体(パテントトロール)の買い手企業とは対照的です。これらの特許不実施主体は最近北米で最大の特許の買い手企業となっています。
特許取引を行う企業への影響
特許の売買やライセンス供与を望む企業にとって、取引活動の一部として北東アジアを含めることが今や必要不可欠となっています。買い手企業にとって、北東アジアは特許の宝庫です。売り手企業にとっては、この地域は特許実施主体である買い手が数多く存在する場所です。また、特許不実施主体(パテントトロール)にとっては、すでにこの地域の収益の大きな割合を占めています。
北東アジアで特許取引を行う際には課題も生じます。企業の特許売買の経験が不足していることがよくあります。これらの企業との取引を成立させるには、通常の契約条件や取引プロセスついて理解してもらう努力が必要です。そのため、交渉にさらに時間がかかる可能性があります。
取引相手に追加のメリットを提供することで、取引をスムーズに行うことができます。 特許を販売する場合は、追加の特許にライセンスを付与することを検討してください。 特許をライセンス供与する場合は、一部の特許を相手方に譲渡することも検討してください。 製品の販売や購入、流通チャネルの提供、製造能力などの具体的なメリットを追加することも、取引を円滑にするのに役立ちます。 知的財産の無形の性質に慣れていない経営陣にとっては、いくつかの具体的なメリットがある取引を承認する方がはるかに簡単になる可能性があります。
最後に、欧米とはビジネス文化が大きく異なるだけでなく、取引相手の英語力が十分ではないこともあります。相手の言語でコミュニケーションが取ることができ、相手のビジネス文化を理解している人員がチームにいれば、取引はより迅速かつスムーズに進みます。