特許価値:売却・ライセンシングが可能な特許とは?

組織や個人の方から、自社や自身の「特許を売却できますか?」というお問い合わせが多く寄せられます。可能な場合が多いのですが、特許によっては買い手がいないものもあります。特許の需要は次の要因に大きく左右されます。

  • 特許の商業利用
  • 特許ポートフォリオのサイズ
  • 特許の質
  • 特許登録国
  • 既存のライセンスとその他の負担

以下にそれぞれの要因について説明します。

特許の商業利用

初めて申請する発明者の方は、どんな特許でもお金になると考えていることがよくあります。しかし、実際はそうではありません。価値のある特許は、商用製品を何らかの形で保護しています。特許請求の範囲に含まれる現行品や販売予定の商用製品が存在しなければ、その特許に価値はありません。

特許に売却またはライセンシングが可能な価値を持たせるためには、高い収益を上げている業界、さらに可能であれば、全世界の収益が10億ドル以上の業界を対象とすべきです。

特許ポートフォリオのサイズ

半導体、電子機器、IT、通信などのハイテク産業では、製品は非常に複雑で、各製品には数千件から数十万件の特許が使われています。他社製品を侵害しない新製品を作ることは不可能です。そのため、企業は競合他社と特許のクロスライセンスを行う、あるいはクロスライセンス交渉の前に特許を購入するのが一般的です。クロスライセンスでは、特許の数(およびその質)が重要となります。1~2件のみの特許は有用性が低く、最低10~20件のパテントファミリーのポートフォリオが売却されるのが一般的です。

それとはまったく対照的に、製薬業界や化学品業界では、化学物質の特許1件のみで製品を保護することもあります。したがって、単一の特許またはパテントファミリーでも、容易に売却またはライセンスできます。

他の業界は、これら両極の間に位置しています。

特許の質

特許の質は次の要因によって左右されます。

  • 特許有効性に対する異議申立に対して反論する能力
  • 特許請求の範囲とその明確さと特許明細書のクレームにおける裏付けの程度
  • 特許の残存期間
  • 特許請求の範囲に記載に合致する対象製品
  • 自社製品による他社の特許権侵害を阻止するための対策の容易さ
  • 製品の特許侵害を検出し実施の証拠(EoU)を作成することの容易さ

特許登録国

価値を高めるには、米国、中国、または欧州(ドイツまたは英国で登録)の少なくとも1つの地域で特許が付与されている必要があります。これらのいずれかの地域で特許が付与されていなければ、仮に出願中の特許出願があったとしても、その特許はおそらく売却の価値もライセンスの価値もないでしょう。

ハイテク産業では、上記の地域以外の国でもさらに特許を取得すると、多少付加価値を高めることができるかもしれません。これとは対照的に、製薬業界では潜在的な患者数が多いすべての国で特許を取得する必要があります。上記の国に加えて、他の主要な欧州諸国、ロシア、カナダ、メキシコ、日本、韓国、インド、インドネシア、オーストラリアでも特許を取得するのが一般的です。

他の業界は、ハイテク産業と製薬業界の両極の間に位置します。

既存のライセンス

特許に付与されるライセンスが増えるにつれ、その特許の売却価値、またはその後のライセンスの価値が低下します。かつて企業は、特許ポートフォリオ全体に非常に幅広い製品群の複数のライセンスを付与していたため、それが必要以上に価値を下げていました。最近では、通常ほとんどのライセンスは特定の種類の製品や特定の技術に対して付与されています。ところが、ライセンスの範囲の定義が不正確であると、特定の製品や技術がライセンスされているかどうかが不明確になり、特許の価値を低下させる可能性があります。したがって、企業が特許ライセンスの範囲を正確かつ可能な限り狭く定義することをお勧めします。定義があいまいなライセンスや必要以上に広く定義されたライセンスは、企業の特許ポートフォリオ全体の価値を低下させる可能性があります。

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